時代の流れとともに、ブランディングにおいて重視される事柄や手法が変化します。
企業のブランディング戦略を考える上で、最新トレンドを掴んでおくことはとても大切です。
今回は、最新のブランディングトレンドを紹介していきます。
“最新ブランディングを抑えるキーワード(日本国内)
まず、最新のブランディングトレンドを理解するためのキーワードをいくつか紹介していきます。
インナーブランディング
インナーブランディングとは、企業の理念を社員に浸透させるための試みです。
以前はCI(コーポレートアイデンティティ/企業理念)を社外に発信していくことが重視されていましたが、現在はそれと同時に、CIを社内に浸透させることが重要視されています。
インナーブランディングによって期待できる効果は、企業と社員の方向性を合わせられる、社員が企業と家族のような一体感を味わえる、またそれによる社員の意欲向上などが挙げられます。
インナーブランディングの具体的な手法としては、社員向けのワークショップの開催や、ロールモデルとなる社員を決めるなどがあります。
会社によって、それぞれの企業の課題に応じて適した手段を選ぶことが大切です。
XI(エクスペリエンス・アイデンティティ)
XI(エクスペリエンス・アイデンティティ)は、企業が大切にする顧客体験を表す言葉です。
これまでは、CI(コーポレート・アイデンティティ)やVI(ビジュアルアイデンティティー)がブランディングにおいて重視されていましたが、現代では新たにXIが重要な要素として加わりました。
この変化の背景には、テクノロジーの進歩があります。
今までは、商品の質が高ければ売れるのが当たり前でしたが、技術の進歩によって商品の技術的な差が埋められてきており、機能面での差別化がしにくくなっているのです。
消費者も商品の質だけでなく、商品に付随する体験を重視するようになっており、“商品ありき”から“顧客体験ありき”の発想への転換が起こっていると言えます。
そのため、企業はどんな商品を作るかだけでなく、消費者にどんな体験を提供するかを突き詰めて考えることが重要です。
単に使いやすいだけでなく、それを使うことで「消費者にどんな感動を与えられるか?」が、商品が選ばれる際に大切な要素になります。
ペルソナ
ペルソナとは、「人格」という意味を表す言葉です。
近年は、企業のブランドがひとりの人格として見られることが多くなっていることから、ペルソナの概念が提唱されるようになっています。
ブランド戦略を考える上で、二つのペルソナを設定することが効果的です。
一つは、顧客となるターゲットのペルソナ、もう一つは、企業や個人がの目指すペルソナです。
プラスアルファとして、競合企業のペルソナを分析すると、自社(自身)のペルソナを設定するのに役立ちます。
ライバルと差別化し、オンリーワンのポジションが取れると良いでしょう。
ターゲットのペルソナと企業のペルソナを規定し、両者を踏まえた上で、企業が提供するべき体験を規定していくことが重要です。
ブランディングのトレンド手法
ブランディングトレンドの鍵を握るのは、“デジタル化”です。
テクノロジーの進歩に伴い、ブランディングにおける手段や考え方が変化しています。
具体的にどのような変化が起こっているのか、見ていきましょう。
モノではなくサービスによる差別化
これまでは、高い技術力がそのままブランドの強みになっていましたが、テクノロジーの発展により、商品を機能面で差別化することが難しくなってきました。
そのため、商品自体ではなく、商品を使用する体験によって差別化を図ることが必要です。
例えば、飲料水の「いろはす」は、「飲み終わった後にボトルを捻り潰す」という体験を売りにしています。
商品自体ではなく、商品に付随する体験を差別化要素として掲げ、成功した一例です。
商品単体ではなく、商品を検討する段階から、実際に使用し、その後のアフターサービスや定期的なケアまでを含んだ顧客体験全体をデザインし、差別化を図ることが求められています。
ストーリーの重要性
機能面での差別化が難しくなっている現状では、「自分たちのストーリーを語る」ということが重要性を増しています。
似たような商品やサービスが氾濫している中で、ブランドにしか語れない独自のストーリーで顧客を魅了することが必要になっているからです。
「なぜ自分たちはこの事業をしているのか」というストーリーに対して共感を得ることができれば、顧客が「この企業の商品だから買う」といった風にファン化してくれるため、効果的にブランディングすることができます。
ただし、ストーリーさえあれば良いというのではなく、良いコンテンツを提供していることが前提ということを忘れてはいけません。
SNSの活用ブランドの発信手段
デジタル化によって起こっている、もう一つの大きな変化は、SNSの普及です。
これまではマスメディアの広告が主な手段だったのに対し、SNSが急速に普及したことで、企業と消費者が一対一のコミュニケーションを取れるようになりました。
SNSを上手く利用することで、テレビ広告に匹敵する宣伝効果を産むこともできます。
SNSでは商品の魅力をダイレクトに伝えるだけでなく、ターゲットとなる顧客が必要としている情報を発信するようにしましょう。
商品の宣伝ばかりしているアカウントは、消費者から敬遠される傾向があるからです。
商品を売りつけるのではなく、消費者の支援者として寄り添う姿勢が大事です。
「現代に求められるSNSを活用したブランディング手法」で詳しく解説しているので、こちらもご覧ください。
グローバル視点で見るブランディングトレンド
最後に、海外で主流になっているブランディング手法を紹介します。
オンラインコミュニティの運営
グローバルでトレンドになっているブランディング手法の一つが、オンラインコミュニティの運営です。
例えば、化粧品メーカーのSephoraは、オンラインのコミュニティを作り、顧客が美容の悩みについて自由に語り合える場所を提供しています。
消費者はお互いにアドバイスをしあったり、Sephoraの商品について話し合ったりでき、企業側にとっても、顧客のリアルな声を広い商品の改善に役立てられるというメリットがあります。
ChatBot
海外で取り入れられているもう一つのブランディング手法に、ChatBotを使用したサービスがあります。
ChatBotは、AI(人工知能)が自動的にチャットを返信するサービスです。
チャットを通して顧客とのコミュニケーションを行なうことで、消費者に企業をより身近な存在に感じてもらえるというメリットがあります。
また、チャットを介して顧客の商品選びをサポートすることで、より良い顧客サービスへと繋げています。
テクノロジーの進歩に伴い、価格や機能よりも体験を重視する傾向は、世界的に見ても主流となっています。
24時間のお客様対応、商品購入後の修理サポートといったサービスを行うことで、競合企業との差別化を図る流れは、今後さらに加速していくようです。
社会問題への取り組み
また、類似の商品が乱立する中で、企業がどんな社会問題に取り組むかが重視されるようになってきています。
例えば、家具メーカーのIKEAは、100%再生可能エネルギーを使うことを目標に掲げ、水の無駄遣いを防ぐ、太陽光発電を取り入れる、サステナブルな資源を使うといった取り組みを行なっています。
このように、環境問題や差別、貧困などの社会問題への取り組みが、多くの企業でブランディングの一環として行われているのです。
日本ではあまり浸透していないSDGs(持続可能な開発目標)も海外では重視されており、企業の社会貢献が問われるようになってきています。
まとめ
今回は、ブランディングにおけるトレンドと、流行りの手法をご紹介しました。
しっかりと時代の流れを把握し、効果的なブランディングができるように戦略を練っていきましょう。